豊澤酒造の酒造り

「高品質のお酒を、多くのかたに」その思いはずっと変わらずに。

昭和40年代、日本全国で普通酒が全盛の頃、 当蔵の4代目・豊澤安男は「これから世の中が豊かになるにつれ、 消費者は本当に良い酒を望むはずだ」と考えました。そして、力を入れたのが純米酒造りです。 「高品質のお酒をたくさんの方に飲んでいただきたい」という思いから、価格を抑えた純米酒「黒松貴仙寿」を 世に送り出したところ、大変多くの方に支持されました。 それは、消費者の視点から「本当に喜ばれる良質の酒」にこだわった結果なのです。
奈良豊澤酒造の酒造りへの思いは、今も変わっていません。 そのため、創業以来、ほとんど機械化せずに手造りに徹した酒造りを行ってまいりました。 今日、奈良豊澤酒造で生産する酒の8割が、純米酒以上の「特定名称酒」で占められているのも、 その証といえます。そうした手造りへの一途な思いの一方で、 酒を愛してくださる方のニーズを取り入れ、柔軟に対応してきたのも奈良豊澤酒造の酒造りです。 小さな蔵ですが、大きな誇りを持って、今後も酒造りに精進してまいります。

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「現代の名工」藤沢杜氏流酒造り

但馬杜氏 藤沢忠治

平成14年、卓越した技能者を讃える「現代の名工」に杜氏藤沢忠治が選ばれ、 厚生労働大臣から表彰されました。
その藤沢杜氏が重視するのは、杜氏のカンと経験。 麹造りはもちろん、洗米やもろみの仕込みから搾りにいたるまで、 全ての工程で機械化をできるだけ避け、杜氏の経験を頼りとする手造りにこだわっています。 例えば、洗米に洗米機を使っていては、洗っているうちに吸水時間を超えてしまうと、蔵人総出の手作業で米を洗っています。また、大吟醸造りには酒米を蒸すのにも、 昔ながらの甑(こしき)を使用。酒は生き物だから対話を大切にしたいと考える藤沢杜氏流の酒造りが、 奈良豊澤酒造の身上なのです。

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麹造りへのこだわり

酒の良し悪しは、麹の出来の良し悪しに由来するといっても過言ではありません。
当蔵は創業以来、一貫して麹造りにこだわってきました。 麹とは、蒸米に麹菌が繁殖したものをいい、その後の酒母造りの土台となり、また酒の風味を左右するものです。 蒸米に付着した麹菌が、一粒一粒の中にしっかり菌糸を伸ばして白くなったものを「破精(はぜ)」といい、 菌糸の広がり具合や内部までの入り込み具合で、「総破精」や「突き破精」などと呼ばれます。 当蔵では、味わいを楽しむ純米酒には、蒸米の表面全体に破精がまわっていて糖化力の強い「総破精」に近い麹造りを行っており、 後味の綺麗さを求める大吟醸や吟醸酒には、表面は斑点状ですが、米粒の内部までしっかり菌糸が入り込んでいる「突き破精」の麹造りを行っています。 特に、大吟醸や吟醸酒の麹は、低温長期発酵に耐えられるよう、製麹時間を長くして、硬く締まった麹になるよう、藤沢杜氏ら蔵人の手によって管理されています。 奈良豊澤酒造の旨くてきれいな酒は、こうした麹造りへのこだわりから生まれているのです。

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自家製酵母による酒造り

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日本酒独特の香りを決めるのは、言わずもがな酵母です。 奈良豊澤酒造では、純米酒以上の特定名称酒の一部は、蔵内から分離された酵母によって造られています。 とりわけ良い出来にあがった酒のもろみから培養した自家製酵母は、当蔵独自の香り高くすっきりとした飲み口の酒を造り出しており、銘柄でいえば、純米吟醸の「無上盃」や「貴仙寿吉兆」として皆さまにお届けしています。